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あぶらじごく

油地獄

斎藤 緑雨

「国会新聞」1891(明治24)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,624 字 · 69 页

青空文庫

のを噛んで前なる川へ投り込み、現在封を破った上で、持って帰ればいゝとはどこがいゝ、おのれ覚えて居ろと天地に向って吐く息に無念の炎が燃えるばかりなのを、今日は小歌さんは丸髷で居たと云いますから、失礼だと思って来ないのでしょうと取做す婢の手前、じっと堪らえれば堪らえるほど手も膝も顫え、罪もない淀文の梯子を荒々しく踏んでその夜は帰ったが、それも一旦の怒でさて又鎮って考えると、もしや小歌が春泉の思惑をかねて、わざとそうしたものでもあるように思われ、その翌晩その翌々晩つゞけて淀文へ来て小歌をかけさせたが、ただ遠出とばかりで影だも見せない、さては噂の通りと貞之進が恨はこの時頂きに上り、床の裡の次団太は自分を驚かして、寝られぬものを無理に寝かせ、夜明けて起るさえが懶くなって、横倒しにした枕に肱を乗せて腹這になって居る時、隣室とまちがえて小女が投込んで行った新聞紙を、ふと取上げて絵のある下の方を見ると、一番に目についた標題は小歌の落籍、その要をつまんで云えば、柳橋の芸妓梅乃家小歌が黒の羽織と仇名された深間のあったを、仲間の花次に奪われた