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かいじょうはつでん

海城発電

泉 鏡花

「太陽 第二卷第一號」1896(明治29)年1月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,039 字 · 25 页

青空文庫

ちっとも準備が整わないで、手当が行届かないもんですから随分繁忙を極めたです。五分と休む間もない位で、夜の目も合わさないで尽力したです。けれども、器具も、薬品も不完全なので、満足に看護も出来ず、見殺にしたのが多いのですもの、敵情を探るなんて、なかなかどうしてそこどころまで、手が廻るものですか。」

といまだ謂いも果ざるに、

「何だ、何だ、何だ。」

海野は獅子吼をなして、突立ちぬ。

「そりゃ、何の話だ、誰に対するどいつの言だ。」

と噛着かんずる語勢なりき。

看護員は現在おのが身のいかに危険なる断崖の端に臨みつつあるかを、心着かざるもののごとく、無心――否むしろ無邪気――の体にて、

「すべてこれが事実であるのです。」

「何だ、事実! むむ、味方のためには眼も耳も吝んで、問わず、聞かず、敵のためには粉骨砕身をして、夜の目も合わさない、呼吸もつかないで働いた、それが事実であるか! いや、感心だ、恐れ入った。その位でなければ敵から感状を頂戴する訳にはゆかんな。道理だ。」

と謂懸けて、夢見るごとき対手の顔を、海野はじっと瞻りつつ、嘲み笑いて、声太く、

「うむ、得難い豪傑だ。