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かいじょうはつでん

海城発電

泉 鏡花

「太陽 第二卷第一號」1896(明治29)年1月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,039 字 · 25 页

青空文庫

六

けれども愛国心がどうであるの、敵愾心がどうであるのと、さようなことには関係しません。自分は赤十字の看護員です。」

と淀みなく陳べたりける。看護員のその言語には、更に抑揚と頓挫なかりき。

六

見る見る百人長は色激して、砕けよとばかり仕込杖を握り詰めしが、思うこと乱麻胸を衝きて、反駁の緒を発見し得ず、小鼻と、髯のみ動かして、しらけ返りて見えたりける。時に一人の軍夫あり、

「畜生、好なことを謂ってやがらあ。」

声高に叫びざま、足疾に進出て、看護員の傍に接し、その面を覗きつつ、

「おい、隊長、色男の隊長、どうだ。へん、しらばくれはよしてくれ。その悪済ましが気に喰わねえんだい。赤十字社とか看護員とかッて、べらんめい、漢語なんかつかいやあがって、何でえ、躰よく言抜けようとしたって駄目だぜ。おいらアみんな知てるぞ、間抜めい。へん蓄生、支那の捕虜になるようじゃあとても日本で色の出来ねえ奴だ。唐人の阿魔なんぞに惚れられやあがって、この合の子め、手前、何だとか、彼だとかいうけれどな、南京に惚れられたもんだから、それで支那の介抱をしたり、贔負をしたりして、内幕を知っててもいわねえんじゃあねえか。