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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
民弥はこう叫ぶと地団太を踏んだ。
「宥免状入りの人形箱、奪われたとは我らに致命! ……やあ方々!」
と鵜の丸兵庫は、同志に向かって大音に叫んだ。
「あの箱をこっちへ! ……死を期してもこっちへ! ……取り返されい取り返されい!」
自身真っ先に後を追った。
それにつづいて義党の面々、民弥を雑えて後を追ったが、こうなると往来の混雑が、妨害をして人形箱を担いだ、三十郎配下の無頼漢の群へ、容易に追いつくことが出来なかった。
走りながらも鵜の丸兵庫は、五十嵐右内を取り返したことを、言葉せわしく物語り、幸い取り返しは取り返したものの、紀州藩士と井上家の士とが、見られる通り大挙して、追い迫って来ると物語った。
民弥は民弥で意外の出来事を――すなわち桔梗屋が出火したことや、それは三十郎とその一味とが、放火した結果らしいということや、火事より避難しようとして、人形箱を梶子と担い、宿の廊下まで出たところを、三十郎と一味とに襲われて、衆寡敵せずこのありさまと、面目なげに物語った。
語るも聞くもあわただしかった。
「やあ菊女殿が萩丸殿を連れ、同志の面々とそこにおられるぞ!」