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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
でねばならぬ、さようの悪運命に至らせました次第、まことにまことに申し訳なく、何んと申してよろしいやら……」
「ご配慮ご無用!」
「心配ござらぬ!」
「そうでなくてさえ青塚の郷は、反骨ある者の集まりと見なされ、日頃から憎まれおりましたれば、今回の事なかろうと、早晩ご領主に難癖つけられ、一郷こぞって離散退去を、命ぜられる形勢にありましたのじゃ!」
「そこへ起こった今度の事件、かえって我々には好都合!」
「いい幸いに六万余石、井上河内守様を向こうに廻し、戦う名目出来ました!」
「そうだそうだその通りだ! 一郷退去は覚悟の前なのじゃ!」
と、庭に集まっていた郷民たちは、異口同音に勇躍して叫んだ。
女たちも絶叫した。
「わたしたちも覚悟をいたしております!」
「めぼしい家財道具など、みんな取りまとめて置きました!」
聞いて兵庫は感謝し安心し、勇気を加えて大音に叫んだ。
「そう承わって拙者はじめ、同志一同ことごとく安心いたしてござりまする! ……しからばいよいよ策を設け、泡吹かせるばかりばかり! ……まず本陣をこの屋敷と!」
こう云った時駄馬を走らせ、一人の郷民が走って来た。