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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
「やア茂十だ! 茂十が来た!」
「物見に行っていた茂十だ茂十だ!」
と郷民たちは声々に叫んだ。
と、その茂十は馬から下りたが、
「爺つぁん爺つぁん嘉門の爺つぁん! 犬帰村の方角からも、城方の兵ども百人あまり、こっちへ寄せて来るようだぞ!」
と、嘉門に向かって注進した。
「そうか、よしよし、何百人であろうと、どの方角からでもやって来い! ……が、兵庫殿そういう次第じゃ! 備えはどうする? 陣立ては如何?」
「奥の部屋にて一応熟議!」
「それよろしい、奥の部屋にて……」
三十郎と梶子とが、城方の兵にまじりながら、青塚の方へ歩いていた。
城方へ一味と見せかけて、城方の兵にうちまじり、青塚の郷へ攻め入ったなら、恋人民弥に逢えるだろう、こう思って梶子は城方になり、三十郎はこれに反し、城方に一味し青塚へ行ったら、自分にとっては恋敵であり、かつまた自分を親の敵と狙う、恐るべき敵の松浦民弥を、討ちとることが出来るだろうと思い、城方の兵にうちまじり、梶子と共に峠道を、青塚の方へ歩いて行くのであった。
「梶子殿変な運命で、変なことになりましたなあ」
三十郎は苦笑して云って、並んで歩いている梶子を見た。