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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

「義党の輩が萩丸様の御身に、危害を加えるかと案じられてねえ」

「はい、さようにござります。……つきましては誠に申しかねます儀、ご迷惑の御事とは存じまするが、あなた様におすがりいたしまして……」

「わたしに何か出来るかしら?」

「あなた様は女人のこと、何気ない様子によそおいくだされ、青塚の郷へ潜入し……」

「ああなるほど、そんなことなら出来るよ」

「彼らの本陣へ接近し……」

「ああなるほど、そんなことだって出来るよ」

「ひそかに萩丸様をお連れ出しくだされ……」

「妙案! わたしにも出来そうだよ」

「ではご承知くだされましょうか」

「やってみよう、出来そうだよ」

こなた青塚の郷においては、戦備万端ととのえられた。

嘉門と菊女と五十嵐右内とが、郷民の中の老人や子供や、女子などを率いて嘉門の屋敷の、本陣に残り守ることとし、萩丸ももちろんこの手に残った。

正面の敵に向かったのは、鵜の丸兵庫を頭とし、明暦義党の半数と、血気の郷民の三分の二であった。

そうして犬帰村の方角から来る、敵の別動隊に対しては、松浦民弥が指揮者となり、義党の同志の半数と、血気の郷民の三分の一とが、これに加わって向かうことになった。