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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
「はい菊女でございます。……さあさあそこからお出なさりませ」
「早かったね、よく帰って来たねえ」
云い云い萩丸は櫃から出た。
出て見て人違いだと気づいたらしく、
「あッ、お前は!」
と驚き叫び、また櫃の中へ隠れようとした。
その手を梶子はグッと握り、
「萩丸様さあさあこっちへ!」
云い云い引っ立て行こうとした。
「誰じゃ!」
と萩丸は大声で叫んだ。
「菊女ではない、お前は誰じゃ! ……厭じゃ! 行かぬ! わしは行かぬ! ……菊女が来ぬうちはどこへも行かぬ! ……菊女がわしにそう云った、ここからどこへも行ってはいけないと!」
(これは面倒だ!)
と梶子は思った。
(大声でも立てられ人でも呼ばれたら、わたしの身の方があぶなくなる)
グッ!
拳を突き出した。
「…………」
萩丸は他愛なく気絶した。
萩丸を人に見せないように、ありあわせの風呂敷を顔へかけ、負傷者を介抱するように見せて、梶子は階下へ下りて行った。
階下はいよいよ混乱していて、梶子に気がつく何者もなかった。
母屋から庭へ出た。
まだ裏門は破られていず、攻める者も守る者も、門を中にして戦っていた。
梶子はつながれている馬を見た。