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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
「これは初耳、さようでござるか」
「それが真実なら面白うござるな」
嘉門までが愉快そうに云った。
「実は」
と右内が、にわかに真面目に、だが少しばかり気恥ずかしそうに云った。
「実は拙者もその伝説を、以前少なからず信じましてな、ひそかにこの島へ渡りまして、それとなく、宝さがしをいたしましたので。で、比較的この島の地理を、存知おるような次第でござる。……そのため大切の党の軍用金も、この絶対安全の地へ、隠匿致しました次第でもござる」
「ははあ」
と兵庫は胸に落ちたように云った。
「何故このような不便の島などへ、好んで軍用金を隠匿したものかと、拙者実は心ひそかに、不思議に思いおりましたが、そのような事情がありましたのか」
この島の深林地帯の、ずっと奥の一所に、巨大な岩山が出来ていた。
洞窟なども幾個かあった。
その一つの洞窟の中に、刃三十郎と菊女とがいた。
数日前にこの島へ来、そうしてここへ来たのであった。
洞窟の中は薄暗かったが、でも入り口から陽が射していたので、夕暮れほどの明るさはあった。
洞窟の外の林の中では、三十郎が連れて来た、内地からの無頼漢や、山男のような島の住人が、大勢ガヤガヤ騒いでいた。