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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
三十郎の部下たちにはわからなかったが、それは青塚の郷民たちであって、自分たちの同勢を充分安全に、海岸の方へ落ち行かせるため、篝火などを一つ一つつけて、紀州藩士を牽制したが、その仕事が終わったので、走って行くところの姿なのであった。
「いつの間にこんな小屋が出来たんだろう?」
「ちょうど腹が減って困っていたところだ、酒まで附いてご馳走がある。こいつを早速いただこうぜ」
三十郎の部下たちは口々に云って、食べのこりの食物だの酒だのを飲んだ。
それにしてもどうしてこれらの連中は、洞窟――お蔵や三十郎を見すてて、こんなところへ来たのだろう?
やとい主の三十郎と菊女とが、洞窟の中へはいって行ったまま、時が経っても出て来ない、その洞窟といえば迷路があって、うかうかはいったら二度とふたたび、出ることが出来ないといわれているところの、まことに恐ろしい洞窟なのであった。
で彼らは云い合った。
「刃さんも菊女殿も、洞窟の中で死んだのだろうよ。どっちみち出ては来ないだろうよ。給金などは貰えっこはない。帰ろう帰ろう家へ帰ろう」と。
そこで揃って下りて来たのであった。
充分飲み食いしてしまうと、