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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

「では……」

「さあ……」

と戸外へ飛び出し、呆気にとられ、不安に感じ、呼びかける旅籠の番頭の声など、耳にも入れず走って行った。

町を出外れ街道まで来た。

「あッ」

と菊女は地へ仆れた。

道に縄が張ってあって、それで足をさらわれたらしい。

バラバラと数人の人影が、並木の蔭から飛び出したが、菊女の上へ折り重なった。

「無礼者! 何をする! おのれがおのれが!」

しかしそう叫ぶ菊女の声は、やがてプッツリ絶えてしまった。

猿轡をかまされたからである。

「他愛なかったなア」

「アッハッハッ」

「さあ行こうぜ、担いで行こうぜ」

「ドッコイショ、いい気持ちだ。……野郎と違って娘っ子だから、担ぎ気持ちが素敵にいいや」

菊女を担いで数人の破落戸は、街道をドンドン走って行った。

こんな出来事のあったことも知らず、松浦民弥は宛はなかったが、敵三十郎に逢いたいものと、お城下をそちこち彷徨っていた。

(辻斬りの出るには時刻が早すぎる)

こんなことを思いながら、

(非人姿をしているような、そんな場合もあるとかいう噂。では非人小屋のある方へ)

こんなことも思いながら、町はずれの方へ足を向けた。