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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

「やれ!」

「悪侍!」

「ノバシてしまえ!」

「仲間の三十郎殿へ加勢しろ!」

と、非人たちは棒きれや竹の杖で、民弥を囲んで打ってかかった。

「代五郎、孫九、浅吉もかかれ! ……女は地面へころがしておけ!」

「合点だ!」

「やれ!」

と、この三人も、民弥目がけて飛びかかった。

民弥は非人や破落戸に囲まれ、棒や竹キレで打ってかかられ、進退きわまり仰天したが、

「やア汝ら情知らぬ奴め、普通尋常の斬り合いでなく、親の敵を討とうとする俺だ! ……それに敵対して悪漢三十郎に味方し、打ってかかるとは何事だ! 退け! しりぞけ! 退散しろ!」

と声を絞り叱※(「口+它」、第3水準1-14-88)した。

が、非人や代五郎たちは、口々に悪態を吐きながら、ただ無二無三に打ってかかった。

と、この時街道筋を、お城下の方から点々と、二十あまりの提灯の火が、縦隊をなして足早に、こっちへ近寄って来るのが見えた。

「何んだ何んだ大変な提灯だ!」

「だんだんこっちへ近寄って来る!」

「早くこいつを仕止めてしまわないと、あの提灯に邪魔されるぞ!」

と、非人や破落戸たちは騒ぎ出した。

三十郎も狼狽し、

(多数の提灯は何んだろう? 藩の捕り方であろうもしれぬ……民弥を早く仕止めて逃げねば……)