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あわだぐちしめすふえたけ(さわのむらさきゆかりのさきわけ)

粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)

三遊亭 円朝

02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,342 字 · 389 页

青空文庫

ことで、旧い家でございます。その豆腐屋の一軒置いて隣が仙太郎の宅で、好い家ではございませんが、表には荒い格子が嵌って、台所には腰障子が嵌めてありまして、丸に仙太というのが角字でついて居ります。鬼の女房に鬼神の譬え、似たもの夫婦でございまして、仙太郎の女房お梶は誠に親切者でございまするから、可愛相な者があれば仙太に内証で助けて遣りました者も多くあります。丁度申下刻に用を終って湯に往くというので、鳴海の養老の単物といえば体裁が宜いが、二三度水に這入ったから大きに色が醒めましたが、八反に黒繻子の腹合せと云っても、山が入って段々縫い縮めたから幅が狭く成って居りまする、其の上にお召縮緬の小弁慶の半纒を引掛け、手拭糠袋を持って豆腐屋の前を通りかゝると、六十の坂を五つ六つ越したかと見える巡礼の老爺が、汚れ果てた単物の上に負笈を掛け、雪卸しの菅笠を冠り、細竹の杖を突き、白い脚半も汚れて鼠色に成ったのを掛け、草鞋を穿き、余程旅慣れた姿の汚ない姿で、三十三番の内美濃の谷組の御詠歌を唄ってまいりましたが、巡礼の御詠歌を唄うは憐れなものでございまする。