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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

02 中巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页

青空文庫

旨を知らせに行くやらした。

雪子は、悦子が興奮して容易に寝ようとしないのを、明日の朝が早いから寝なさい寝なさいと、無理に二階へ上らせてしまってから、徐ろに自分の衣裳鞄を詰め、それが済むと、貞之助がまだ書斎の方で調べ物をしているので、姉と妹を掴まえて十二時過ぎまで応接間で話していたが、やがて妙子が、

「もう寝よう、雪姉ちゃん」

と、無作法に大きな欠びをした。この妹は三人の中で一番行儀が悪い点で雪子と対照を成すのであるが、暑い季節には殊にそれが甚しく、今夜も風呂から上ってからは浴衣一枚の帯ひろ裸で、ときどき胸を露わにして、団扇で涼を納れながらしゃべっていたのであった。

「睡たかったら、こいさん先へ寝なさい」

「雪姉ちゃん、睡くないのん?」

「今日はあたし、あんまり動いたせいか、芯が疲れ過ぎてるみたいで、睡いことないねん」

「もう一本注射したげよか」

「明日の朝、出がけにしてもろた方がええか知らん」

「今度は気の毒やったわな、雪子ちゃん、―――」

と、幸子は、雪子の顔に例のシミが久し振にうっすらと現れているのを看て取りながら云った。

「―――今年のうちにもう一遍出て来て貰うようなことがあって欲しい思うてるねんで。