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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
02 中巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页
そして、ほんとうに、あの風がもう少し長く、もう少し強く吹いたならば、あの家は潰れたに違いなかった。なぜと云って、幸子はさっき階段を駈け降りた時は、半分は自分の恐怖からそんな妄想を描いたのだと思ったのであるが、事実、風がごうッと吹き付ける度に、この家の柱と壁の隙間が一二寸離れるのを、その六畳の部屋へ来てはっきり目撃したのであった。部屋には懐中電燈が一つ燈っていただけなので、その薄暗い明りで見ると、五寸か一尺ぐらいもの隙間が開くように感じられたが、正直に云って、一二寸と云うのは誇張でなかった。それが開いたきりになるのではなくて、風が止むと隙間が合わさり、吹き出すと又開くのである。そして一回は一回と開きかたがひどくなるのである。幸子は丹後の峰山の地震の時に大阪の家が随分揺れたのを記憶しているが、地震の場合は瞬間的で、風のように時間が長くはないし、何にしても柱と壁が離れたり合わさったりすると云うようなことは始めてであった。
皆が顫えている中で努めて泰然としていた辰雄も、その壁の様子を見て不安になったらしく、ここの家だけがこんなに揺れるのと違うだろうか、隣近所は普請がええからまさかこんなことはあるまい、………と、そう云い出したので、小泉さんの所なんかきっと大丈夫だよ、あの家は頑丈だし、平屋だから、………と、輝雄がその