轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
02 中巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页
幸子はそのうちに返事を出そうと思いながら、書くには書いても誰に訳して貰ったらよいか、夫は面倒がって堪忍してくれと云うし、ちょっと適当な人が見付からないので、つい億劫で延び延びになっていたが、或る夕方蘆屋川の堤防を散歩していると、嘗てシュトルツ夫人に紹介されたことのある、日本人でヘニングと云う独逸人の奥さんになっている人に行き遇ったので、ふと思い出して相談すると、お安いことです、私は巧く書けませんけれども、娘は独逸語も英語も書けますから、娘に翻訳させましょうと云って、ヘニング夫人は引き請けてくれた。それでも幸子は、遠い国外へ手紙を出すと云うことが何となくぴんと来ないので、又暫く捨てて置いて、漸く或る日自分も認め、悦子にも認めさせて、それをヘニング夫人の許へ送り届けたのであった。
と、その直ぐ後で、紐育から悦子に宛てて小包が来たのを解いて見ると、それはペータアが亜米利加経由で帰国する途中、約束の靴を買って送って寄越したのであった。だがその靴は、どうしたことか、あんなに寸法まで測って行ったのに、悦子の足には小さ過ぎて篏まらなかった。悦子はそれが上質のエナメル革の、余所行き用の立派な靴であっただけに、諦めかねて何度も足を突っ込んで見たが、辛うじて這入るには這入るけれども、固くてどうにもならないのであった。