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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

02 中巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页

青空文庫

貞之助や雪子なども、そんな事件になっていたのなら、なぜ打ち明けて相談してくれなかったのかと云うであろうし、妙子を飜意させるのにも、自分一人の力では覚束ないので、貞之助と、雪子と、三人で代る代る諭して見たら利き目がありそうにも考えられた。

「ふうん、………それ、一体いつのことやねん?………」

貞之助は、廿日正月も過ぎた或る日の夕方、離れの書斎で新刊の雑誌をめくっているところへ、幸子が何か様子ありげに這入って来て坐ったので、不思議そうに顔を擡げると、やがてその話になったのであった。

「そんな約束したのんは、去年あたしが東京へ行ってた間や云うねんわ。あの時分、あたしも、悦ちゃんも、お春どんもおらなんだよってに、毎日板倉が家に来てたらしいねんけど、………」

「そしたら僕も責任がある訳か」

「そんなことないけど、あんた、ちょっとも気イ付きなされへんなんだ?」

「僕はちょっとも気イ付かなんだ。………けど、そない云われると、水の前から、えらい馬が合うてるみたいな所があったな」

「そうかて、あの男、誰とでもあんな風ですねん。こいさんだけと違うねんわ」

「そう云えばそうやけど。………」