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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

02 中巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页

青空文庫

夫婦はそこまで話し合って来て、図らずも考が別々であることを見出した。幸子が奥畑を嫌い出したのは、貞之助の意見に影響されたのが始まりで、今では確かに好感を持っていないのだけれども、しかし板倉と比較しては、いくら何でも奥畑が可哀そうだと云う頭なのであった。それは坊々育ちの極道者かも知れないし、甲斐性なしであることも事実であろうし、見るから軽薄な、感じの悪い青年であることは分っているけれども、もともと彼女とは幼な馴染の、船場の旧家の生れであり、同じ人種のようなものであって見れば、好きも嫌いもその範囲内でのことである。彼と妙子とを正式に結婚させる分には、さきざきどんなに困るようなことがあるにしても、さしあたって世間の手前は悪くないが、妙子が板倉と自由結婚すると云うことになれば、これは明かに、社会的に嘲笑を招くであろう。だから、奥畑との結婚を切り離して考えれば、決して望ましいことではないが、板倉との問題が生じて見れば、それを防止するために寧ろ前者を択んだ方がよいくらいである。―――と、そう云うのが幸子の意見であるが、貞之助はその点進歩的で、家柄と云うこと一つを除けば、奥畑が板倉に勝っているところは何もない、結婚の条件としては正しくこいさんの云う通り、愛情と、健康と、自活する力との三つを備えていることが何よりも大切