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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
02 中巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页
思って、時々観客席の方へ気を配っていたけれども、「雪」が始まる前には確かに見かけなかった、殊に雪子ちゃんは、楽屋よりは観客席に多くいたので、来ていれば気が付く筈であるが、何とも云っていなかったところを見ると、或はあなたと前後して入場したか、でなければ、啓坊にも何か魂胆があって、此方に見付けられないように、隠れて見物していたか、孰方かであろう、それで、板倉が来たことも、こいさんはどうか分らないが、自分や雪子ちゃんは知らなかったし、ましてそんな活劇があったことなどは尚更知らない、と云うのであった。
「ええ塩梅に、楽屋では誰も知らなんだらしいけど、知れたらほんまに体裁が悪いわ」
「ま、板倉は下手に出てるよってに大した事にもならなんだけど、こいさんのために、二人の男が場所柄も忘れて喧嘩するなんて云うことは、あんまり見っともええこッちゃないな。こんなことが世間へぱっとせんうちに、何とか解決しとく方がええで」
「そない云やはるのんやったら、あんたかて心配してほしいわ」
「心配はしてるけど、僕の出る幕やない思うよってに。―――雪子ちゃんは、板倉のこと知らんのんか」
「今度雪子ちゃんを呼んだんは、相談相手になって貰おう云う気イもあってんけど、まだ話してないねん。