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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

02 中巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页

青空文庫

お人好しの一面があるから、恐らく板倉の云うなり次第に利用されているのであろう、だからこいさんが板倉と切れない限り、お金なぞ出してやらない方がよい、と云うので、それも一つの観察ではあるが、幸子にして見れば、妙子があれほど意気込んで懸っているものを、横合いから邪魔をしてまで不成功に終らせるには忍びないところもあった。彼女は妙子が自分達の忠告に従わないで、板倉との約束を貫徹する気でいるらしいことに不満は感じているけれども、かと云って、若い女の身空で誰の世話にもならず、一本立ちをしようとする健気な妹の志を思えば、徒に義兄の味方をして弱い者いじめをしたくはなかった。その使い方がどうであるにしろ、兎に角それを独立の資金に充てようと云うのであり、又妙子ならば実際それだけに使いこなす能力を持っているのであるから、義兄が預かっているものがあるなら、出してやって欲しいと云う気が、彼女にはあった。然るに、妙子に同行して東京へ出かければ、否でも応でも本家と妙子との間に立たされる羽目になり、ややもすれば姉に口説かれて、心ならずも本家に味方せざるを得なくなるであろう。彼女はそれも厭であるが、さればとて、判然と妙子の側に立って姉夫婦を圧迫する程の義侠心は尚更ない、と云うのが正直なところなのであった。