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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
02 中巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页
………」
彼女はそんなことよりも、これで義理も済んだのであるから、何とかして妙子をも連れて帰らなければと思いながら、好いしおが見付からないので困っているところなのであった。
と、看護婦が上って来て、病室の方へ行きかけたが、廊下に妙子がいるのを見ると、
「あのう、院長先生が、御近親の方にちょっと御面会なさりたいそうですが、………」
と云った。
「………誰方かお一人、おいでになって下さいませんか」
妙子がそれを取次ぐために這入って行くと、病人の寝台の頭の方に嫂と妹が蹲踞まってい、脚の方に老人夫婦がいた。そしてこの時も、お前が行くか私が行くかで年寄達は暫くモジモジしてから、二人連れ立って出かけて行ったが、十五分もすると戻って来て、父親はさも当惑したように溜息を吐いて坐り、母親は泣きながら、何かぶつぶつと父親の耳の端へ来て呟いていた。二人が院長にどんな風なことを云われたのかはよく分らないのであるが、後でその時の様子を聞くと、院長は此処の病院でこのまま病人に死なれたのでは厄介なことになると思い、何としても外科の手術を受けなければならないように、余程上手に老人夫婦に持ちかけたらしいのであった。