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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
02 中巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页
を被った人影が、植え込みの向うを玄関の方へ歩いて行くのがちらと見えた。
「誰方?」
と、幸子は、テラスから庭へ降りて来るお春の方へ、此方から寄って行きながら聞いた。
「奥畑さんでございます」
「そう、―――」
幸子はちょっと狼狽えた様子を見せた。今日奥畑が見舞いに来るであろうと云うことは、つい考え及ばなかったけれども、いかさま、これはそうあるべきが当然であった。が、それにしてもどう扱ったらよいものか知らん、実はこの間のこと以来、今度からは訪ねて来ても出来るだけ余所々々しくして、玄関で会って帰す程度にしたいと、自分でも思い、夫にもそう云い付けられていたのであるが、今日の場合は、こいさんの安否が分るまでは此処で待たして戴きたいと云うかも知れないし、そう云われたらそれを無下に断るのも人情に欠けているような気がする、正直のところ、今日ばかりは奥畑を待たせて置いて、妙子の無事な顔を見せてもやりたいし、自分たちと一緒に喜んでも貰いたい。………
「あの、こいさんはいやはりますか仰っしゃいますよってに、まだお帰りになりません申しましたら、そんならちょっと奥さんに、仰っしゃっていらっしゃいますけど、………」