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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

01 上巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页

青空文庫

、その時に着て行く羽織や帯や長襦袢の末にまで、それとなく心づもりをしている様子が余所目にも看て取れるのであった。

さて、いよいよその季節が来て、何日頃が見頃であると云う便りがあっても、貞之助と悦子のために土曜日曜を選ばなければならないので、花の盛りに巧く行き合わせるかどうかと、雨風につけて彼女たちは昔の人がしたような「月並な」心配をした。花は蘆屋の家の附近にもあるし、阪急電車の窓からでも幾らも眺められるので、京都に限ったことはないのだけれども、鯛でも明石鯛でなければ旨がらない幸子は、花も京都の花でなければ見たような気がしないのであった。去年の春は貞之助がそれに反対を唱え、たまには場所を変えようと云い出して、錦帯橋まで出かけて行ったが、帰って来てから、幸子は何か忘れ物をしたようで、今年ばかりは春らしい春に遇わないで過ぎてしまうような心地がし、又貞之助を促して京都に出かけて、漸く御室の厚咲きの花に間に合ったような訳であった。で、常例としては、土曜日の午後から出かけて、南禅寺の瓢亭で早めに夜食をしたため、これも毎年欠かしたことのない都踊を見物してから帰りに祇園の夜桜を見、その晩は麩屋町の旅館に泊って、明くる日嵯峨から嵐山へ行き、中の島の掛茶屋あたりで持って来た弁当の折を開き、午後には市中に戻って来て、平安神宮の