轻松读懂日语经典作品
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
01 上巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页
その日も、待っているうちにとうとう十時が過ぎたので、
「櫛田さん、今日はすっぽかしらしいで」
と云っていると、十一時ちょっと前になって、自動車の停る音がした。
「黄疸や、これは。間違いなし。―――」
「昨日ビフテキの大きいのん食べましてん」
「それが原因ですな。御馳走の食べ過ぎや。―――蜆汁を毎日飲むといいですな」
そんな風に、気さくな物云いをする人で、忙しいせいもあっていつも簡単に、さっと診察をして、さっと風のように出て行ってしまうのであった。
幸子はその明くる日から病室で臥たり起きたりして暮したが、あまり苦しくもない代りに、そうはかばかしく良くなりもしなかった。一つには妙に蒸し暑い、降るのでも晴れるのでもない入梅前の天候が鬱陶しく、それでなくても体の持って行き場のないような、いやな陽気がつづくせいでもあるらしかったが、二三日風呂に這入らないので、汗臭くなった寝間着を着換えて、蒸しタオルにアルコールを滴らしたのを持って来させて、お春に背中をこすらせていると、そこへ悦子が上って来て、
「お母ちゃん、その床の間に活けてあるのん、何の花やのん」
と云った。
「罌粟の花やわ」