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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
01 上巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页
「御紹介しますわ、この方、相良さんの奥さん、―――」
と、丹生夫人は、一と眼で洋行帰りと知れる、純亜米利加式の洋装の夫人を指しながら云った。
「あたしの女学校時代のお友達よ。御主人は郵船会社にお勤めになっていらしって、ついこの間まで、御夫婦でロスアンジェルスにいらっしゃいましたの」
「初めまして、―――」
と云いながら、幸子は直ぐにこのお客達に面会したことを後悔した。病気でこんなに窶れている時に、初対面の人に会うのはどうであろうかと思わないでもなかったのだけれども、まさかその人と云うのが、こうまで凄いハイカラな夫人であろうとは考えてもいなかったのであった。
「あなた御病気? 何処がお悪いの?」
「黄疸になってんわ。見て御覧、―――眼エ黄色いでしょ」
「ほんと。とても黄色いわね」
「御気分がお悪いんじゃない?」
と、下妻夫人が聞いた。
「ええ。―――でも今日は大分ええ方なんですの」
「済みませんわね、こんな時にお邪魔に上って。丹生さん、あなたが気が利かないのよ、玄関で失礼すればよかったのに」
「まあ、あたしのせいにするなんて人が悪いわ。いいえね、蒔岡さん、実は相良さんが昨日突然出ていらしったんだけれど、この方、あんまり関西を御存知ないのよ。