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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
01 上巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页
従って、今度のことは彼女達には青天の霹靂であったが、それは一つには、銀行の重役級に異動があって方針が変ったせいでもあり、一つには、辰雄自身、今度は大阪を離れても地位の昇進を望む気持になっていたせいでもあった。と云うのは、辰雄にしても、同輩の者達がだんだん出世するのに自分だけ呉下の旧阿蒙でいるのは余り腑甲斐なくもあるし、その後子供たちの数も殖えて、生活費が嵩んで行く一方、経済界の変動や何かで、養父の遺産と云うものが以前のようには頼りにならなくなって来たからであった。
幸子は、郷土を追われて行くように感じている姉の胸のうちもいとおしく、家にも名残が惜しまれるので、見舞をかねて早速訪ねようと思いながら、差支えが出来て二三日ぐずぐずしていると、姉は又電話をかけて来て、いつ大阪へ帰って来られることか分らないけれども、さしあたりこの家へは「音やん」の家族に留守番かたがた安い家賃で住んで貰うことにした、ついては、八月と云えば間もないことだから荷物の整理もして置かなければと、近頃は毎日土蔵の中で暮しているが、父が亡くなってからこのかたの家財道具が溜っているので、何処から手をつけてよいのやら、いたずらに取り散らかした品物の山を眺めて茫然としている、きっとそれらの品物の中には、あたしには用がなくても幸子ちゃんが見れば欲しいもの