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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
01 上巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页
あると思う、ついては、雪子は別に支度をする必要もないことであるから、明日にも上本町へ帰って、家族と一緒に立って貰いたい、妙子の方は仕事を持っていることだから、跡始末のために多少おくれるのは仕方がないとして、一二箇月後にはこれも間違いなく引き揚げて貰いたい、尤も仕事その物を止めさせようと云うのではないから、東京へ来てからでも人形の製作に耽ることは差支えない、むしろ東京の方がああ云う仕事には便宜が多いくらいであろう。義兄も、折角世間に認められ出した仕事であるから、当人の製作態度が真面目でさえあるなら、東京に於いて又仕事部屋を持つことを許してもよいと云っている、―――と云うようなことなのであるが、実はこの問題は、先達鶴子ちゃんが泊りに来ていた間に相談すべきであったのだけれども、休養させて貰いに来て、そう云う肩の凝る話を持ち出したくなかったので、何も云わないでしまったから、大儀ながら叔母ちゃんが行って話してほしいと云うことで、今日は私が鶴子ちゃんの使で出向いて来た、と云うのであった。
この叔母の話は、本家が東京へ行くことになったと聞いた日から、いずれは持ち上るであろうと予期されていたところのもので、目指された二人は、口に出して語り合いこそしなかったけれども、内々少からず憂鬱を感じていたのであった。