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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
01 上巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页
これには上の姉や幸子が心配して貯金をすすめたことがあったが、云われる迄もなく蓄める方も如才なく蓄めていて、ちゃんと郵便貯金の通帳を、上の姉には内証だと云って幸子にだけ出して見せ、「中姉ちゃんお小遣ないなら貸したげるわ」と云ったのには、さすがの幸子も開いた口が塞がらなかった。と、或る時幸子は、「お宅のこいさんが奥畑の啓坊と夙川の土手を歩いてはったのを見た」と云って、注意してくれた人があったのではっとした。実はこの間、妙子のポケットからハンカチと一緒にライタアが転げ出したのを見て、妙子が隠れて煙草を吸うことには心づいていたが、廿五六にもなってそのくらいなことは仕方がなかろうかと思っていた矢先だったので、当人を呼んで聞いてみると、本当だと云う答であった。そして、だんだん質して行くと、あれきり啓ちゃんとは音信不通になっていたのだが、先日人形の個展を開いた時に見に来て、一番の大作を買ってくれたりしたことから、又附き合うようになった、でも勿論清い交際をしているのだし、それもほんのたまにしか会わない、自分も昔と違って大人になっているから、その点は信用して貰いたいと云うのであった。