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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
01 上巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页
そのうちに着物の裾が又さっとまくれそうになるのんで、片っ方の手でそれも押えてんならんし、ほんに、東京のからッ風云うたらやない思うたわ」
「しかし、僕は去年渋谷で厄介になった時にそう思うたが、子供云うもんは何でああ早う土地の言葉を覚えるねんやろ。―――あの時は十一月やよってに、まだ東京へ行って二三箇月しか立ってえへんのんに、本家の子達はもうちゃんと東京弁使うてるねんが。それも小さい子供ほど上手やねんで」
「もう姉ちゃんの年になったら、あかんやろなあ」
と、幸子が云った。
「そらあかん。第一姉ちゃんは覚えよう云う気イないねんもん。この間もバスの中で大阪弁で話しかけるさかいに、外のお客がみんな姉ちゃんの顔見るのんで難儀したけど、姉ちゃん云うたら、ああ云うとこはえらい心臓やねんな。顔見られても平気で話してるねんわ。そしたら、それ聞いて、『大阪弁も悪くないもんだね』云うてる人もあったけど」
雪子は、「大阪弁も悪くないもんだね」と云う東京弁のアクセントを上手に真似た。
「年増の女はみんな心臓や。僕の知ってる北の芸者で、これはもう四十以上の老妓やねんけど、東京へ行って電車に乗ったら、わざと大阪弁で『降りまッせえ』