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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
01 上巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页
。それで御家庭の事情は何も彼も知っていて、いつかの新聞の事件なども、あの記事が誤りだと云うことはわざわざ新聞社まで行って調べて来ているくらいなので、よく諒解していたけれども、なお自分からも、そんなことがあるようなお嬢様かどうかまあお会いになって御覧なさいと云って、納得が行くように説明はしておいた。先方は謙遜して、蒔岡さんと私とでは身分違いでもあり、薄給の身の上で、そう云う結構なお嬢様に来て戴けるものとも思えないし、来て戴いても貧乏所帯で苦労をさせるのがお気の毒のようだけれども、万一縁があって結婚出来るならこんな有難いことはないから、話すだけは話してみてほしいと云っている。自分の見たところでは、先方も祖父の代までは或る北陸の小藩の家老職をしていたとかで、現に家屋敷の一部が郷里に残っていると云うのであるから、家柄の点ではそう不釣合でもないのではあるまいか。お宅さんは旧家でおありになるし、大阪で「蒔岡」と云えば一時は聞えていらしったに違いないけれども、―――こう申しては失礼であるが、いつ迄もそう云う昔のことを考えておいでになっては、結局お嬢様が縁遠くおなりになるばかりだから、大概なところで御辛抱なすったらいかがであろうか。