轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
01 上巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页
と、幸子が云った。
「―――わたし、電車の中でコムパクトを開けて、隣の人に嚏されたことが二三度ございます。わたしの経験を申しますと、上等の匂のするお白粉ほどそう云うことが起りますの」
「ははあ、して見るとやっぱりそうなんですな。―――いや、この間の御婦人は違ってましたが、その前の時は、事に依ると奥さんじゃございませんでしたかな」
「ほんに、そうだったかも知れません。どうもあの時はえらい失礼を」
「わたくし、そんなこと始めて伺いますけど、―――」
と、房次郎夫人が云った。
「それでは一遍、なるべく上等のお白粉を入れて試してみることに致しますわ」
「冗談じゃあない、そんなことを流行らしちゃ困りますよ。今後御婦人は、電車の中で風下の席に人がいる場合、決してコムパクトを使わないことに願いたいもんですな。蒔岡さんの奥さんは只今御挨拶をなすったからいいが、この間の婦人なんぞ、わたくしに二つも三つも嚏をさして置きながら知らん顔をしているんだから怪しからんですよ」
「あの、わたしの下の妹は、電車の中で男の人の洋服の襟から馬の毛がピンと飛び出しているのを見ますと、ついあれを抜きたくなる云いますの」