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うつくしいにほんのれきし

美しい日本の歴史

吉川 英治

「週刊文春」1959(昭和34)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,561 字 · 37 页

青空文庫

『いやいや、つい言葉は激したが、心では何も怒ッてなどはいない』

と、苦しげに顔を和げるような例も一再でなかったそうだ。

黒田家の治績と藩風が大いに挙がったのは、この異見会の功が大きかったといわれている。長政もそれを認めていたとみえて、死の前には、

「異見会の儀は、年来われわれが致し来りし通り、月毎、かならず城内の釈迦ノ間にて、催し候ふべし」と子息忠之への遺言状のうちにも言い忘れていなかった。これがほんとの“黒田ぶし”と、言っては洒落にもならないが――。

そこでこんな封建の主従談合から、何か答えを引き出そうなんて無理を私も考えてみたわけでもない。唯、近ごろ多い小型争議の膠着を見るにつけても、また大きくは、こんな大騒ぎをして選挙をやったあげくの後の近代会議制を見ても、なんと人間喪失のはなはだしい仕組みになったものかと嘆じられるだけなのだ。そして人間と人間同士が仲よく話合えた故郷の座が、ときにはふと恋しくもなってくる。(昭和三十四年)