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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「それはみみずじゃないよ。ごかいだよ」

「ははあ」

「みみずににているけれども、ゴカイしちゃいけない」

「ハッハハハハ」

と書生の杉山が手をうって喝采した。この男はおせじ使いだから、若様がたがしゃれをいうと笑いころげる。

お台場の沖へ出るとみんなソロソロ支度にかかった。秋の好晴だから、ほかにも釣り舟がたくさん出ている。

「今日は僕がまた一番槍だぜ」

と照彦様がいった。

「若様にはとてもかないません」

と杉山が調子をあわせる。

「数ではまけませんが、口明けだけはいつも若様に持ってゆかれてしまいます」

と富田老人もあきらめている。

「なあに、今日は私がやります」

と黒須さんは確信があるようだった。

しかし一番槍は照彦様でも黒須先生でもなく、正三君だった。ごかいをつけて糸を下ろすか下ろさないに、

「釣れた釣れた!」

といいながら、大きなぼらを引き上げて、

「なんでしょう? これは」

ときいた。

「とにかく魚ですな」

と杉山は問題にしなかった。

「バカだよ、それは。内藤なんかに釣られる魚はりこうではないにきまっている」

と照彦様がくやしがった。富田さんと黒須先生は糸を下ろして顔を見合わせた。