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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「堀口君、もう帰ろう」

と尾沢生が上着を肩へかけてやった。堀口生は無言のままそれを着て立ちあがった。

「帰ろう」

と勝った組は高谷君と正三君をとりまいて、歩きだした。

「きみ、目をひやしてゆきたまえ」

と細井君が水道のところですすめた。

「いいよ。なんともないよ」

と答えたものの、高谷君は左の方が血目になって、まわりに黒ずみがよっていた。痛いに相違ない。正三君は口ばたがはれあがって、烏天狗そのままの顔だった。唾ばかり吐いている。ただ勝ったのでない。どっちも犠牲があった。

運動場の中ほどまできたとき、

「おいおい、松村君」

と堀口生が追ってきた。弥次馬の中には覚えず逃げ出したものがあった。やはり堀口生は恐れられている。

「おい、松村君、ちょっと待ってくれたまえ」

「なんだい?」

「松村君と高谷君と内藤君と細井君。それから皆。ちょっと記念樹の下まできてくれたまえ」

「いやだよ」

と松村君はことわった。堀口生のきてくれには皆こりている。ことに腕力で負けた意趣ばらしにナイフでも振りまわすのかという疑念があった。

「きみは僕がまた喧嘩を売りにきたと思うのかい?」

「そうじゃないのかい?」