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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

安斉先生は学監室へ戻るとまもなく、電鈴を鳴らした。

「ご用でございますか?」

と書生の杉山があらわれた。

「先生がたをお呼び申しておくれ」

「皆さんでございますか?」

「うむ。会議を開きますから、十時にお集まりくださいって」

「はあ」

「一ぺんいってごらん」

「会議を開きますから、十時からお集まりください」

「十時にお集まりください」

「十時にお集まりください」

「よろしい」

「はあ」

と杉山は出ていった。間違いのないようにくりかえさせるのが癖である。

安斉先生は机にむかって筆を取った。まづ、学監室会議事項としたためて、それから考え考え、

一、休暇中ご補習の件

二、武道ご奨励の件

三、ご遊楽の件

四、お肝試しの件

と書きおわった。そこへ杉山がもう帰ってきて、

「黒須先生はおるすでございましたが、有本先生と矢島先生はすぐお見えになります」

と報告した。花岡家の家庭教師三名はやはりおやしき内に住んでいる。

時をうつさず、有本さんと矢島さんがうち揃って出頭した。安西老は、

「さあ、どうぞ」

と迎えて、まん中の大きなテーブルへ進みよった。

「失礼いたします」

と二人とも着席した。

「休暇中を朝からご足労かけました」