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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

皆の署名を吟味していたのだった。やがて下駄の音が聞こえはじめた。杉山はやりすごしてから、

「ワーウウウウ」

と唸りながら先生の肩へ虎の前足をかけた。

そのとたん、先生がかがんだ。

「エイッ」

と一声、杉山はしょい投げをくって、がけ伝いに下の畑へ転げ落ちた。

安斉先生は悠然として学習室へもどって、

「でましたよ」と、おっしゃった。

「ははあ」

と照彦様は先生の顔をじっと見つめた。神色自若としていた。

「虎ですよ。ハッハハハハ、がけ下へ投げましたが、あそこにはなにがあるんでしょうか? ドブーン、という音がしました」

「それは大変です」

と照常様が駈けだした。照正様も後を追った。

「だれかいないか? 杉山、杉山!」

と黒須先生も狼狽して加勢を呼んだ。

「ハッハハハハ」

「どうなさいました?」

「ハッハハハハハッハハハハ」

と安斉先生は椅子につかまって笑いくずれた。

昼弁慶

お肝試しの会は、書生の杉山が安斉先生にお裏山の畑の肥だめへ投げこまれて、おやしき中の評判になった。損をしたのは伯爵だった。しかしさすがにお殿様だ。

「あの虎の皮は英国のハッチンソン卿から贈られたものだが、不浄へ落ちては仕方がない。