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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「お帰り!」と運転手が景気よく叫んだ。

「まあまあ、正三。まあ、若様、まあまあまあまあ」

とお母様は驚いた。運転手は玄関へおみやげを山のように積み上げた。姉さんたちが出てきてウロウロする。忠義一図の一家だから、おやしきという声がかかると大変だ。

「若様、どうぞおあがりください」

と正三君は学友から接待役に早がわりをした。照彦様はすぐ帰るつもりだったが、やはり別れが辛い。

「それじゃ待っていておくれ」

と運転手に命じて、客間へ通った。

「これはこれは。ようこそおこしくださいました」

とお母さんは平身低頭して、

「あいにくと主人も長男も不在でございますから、かわって申しあげます。正三が長々お世話に相なりまして……」

とご挨拶を申しあげる。

「僕がお世話になりました」

「どう仕りまして、わがままものでございますから……」

「僕がわがままものです」

「今日はまたお頂戴物を仕りまして……」

「それは僕、知りません」

と照彦様はまっかになって一々答弁した。それからお母さんがひきさがった後、

「内藤君、僕はもうすぐに帰るんだから、少し遊ぼう」

と向きなおった。

「どうぞごゆっくり」

「いや、実はきみに内証話があるんだから、ここはいけない。