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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

ここもこんでいた。客がドンドンはいってくる。婦人が少年をつれて、

「だめよ。坐るところがないわ」

といいながら、祐助君の卓子に近づいた。

「やあ、内藤君」

と少年が呼んだ。

「やあ、堀口君」

と正三君が伸びあがった。

「おかけください」

と祐助君が明いていた椅子を指さした。

「恐れいります」

と婦人は会釈して腰をおろした。

「お母さん、これは同級の内藤正三君という秀才です」

と堀口生が紹介した。

「それはそれは」

「僕と喧嘩をした内藤正三君です。お母さんからもあやまってください」

「きみ、きみ」

と正三君は困った。

「ここで会うとは思わなかったよ」

「僕も」

「花岡さんは一緒じゃないの?」

「僕は休みになってから家へ帰っている」

「そうかい? これはしまった」

「なんだい?」

「僕はきみのところへ年賀状を出したんだよ、花岡伯爵様方として出しちゃった」

「それでいいんだよ、元日にお年賀にあがるから」

「きみも僕のところへ年賀状を出してくれないか?」

「出すよ」

「僕のところは麹町三丁目三番地だ。明日出せば元日に着く」

と堀口生は熱心にいった。

「三の三だね。覚えている」

「きみからもらえれば嬉しいんだ」