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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「朝からね」

「はあ」

「四日の晩はおもしろいんだぜ」

「楽しみにしています」

「去年はお父様に箒があたって大笑いだった」

「ははあ」

「きみは福引きを考えたかい?」

「ああ、忘れていました」

「僕は考えたよ」

「どんなのですか?」

「安斉先生ってのさ」

「どういう意味です?」

「やかん頭さ。景品にやかんを出す」

「それはおわるいですよ」

「お兄様がたもよろしくないから考えなおせとおっしゃった。しかしいいのがなくて困る」

と照彦様は首をかしげた。

花岡伯爵家では二日が正式のご年礼で、お殿様が旧藩士をご引見なさる。四日の晩は新年会と称して、おやしき内のものが集まる。女中や書生のはてまでだから、ナカナカの大人数になる。お出入りの講釈師がきて、ご先祖の軍談を一席弁じる。教育映画もある。しかし一番の呼びものは福引きだ。家令の富田さんがその係りを承る。お殿様はじめ我と思わんものから種を集めて品物を買いそろえる。註文が千差万別だから、新年早々一仕事のようだ。富田さんの判定によると、お殿様が毎年一番いい種をお出しになる。これはおひまで、ごゆっくりごくふうなさるからだろう。もっともお殿様のご着想をまずいなぞとは申しあげられない。