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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「もうよそう」

「はあ」

「つまらない」

とラケットを台の上へほうりだす。正三君は後かたづけをしなければならない。

大弓場へいって弓を引いている間もそうだ。照彦様は楽なことだけをする。すなわち射るばかりで、矢を拾いにはけっしてゆかない。

「若様、今日はすこしあたりがおわるいですな」

「なあに、きみには負けない」

「僕はもう二本あてました」

「僕は三本あてているよ」

「僕は矢数が少ないんですもの」

と正三君は拾いにばかりゆくので、半分しか射る間がない。

「そんなことをいうなら、考えがあるぞ」

「なんですか?」

「矢を取りにいっているとき、射ってやる」

「冗談おっしゃっちゃ困ります」

「きみの頭を射ぬけば、まさかあたりがわるいとはいうまい」

「僕はもう取りにゆきません」

「大丈夫だよ」

「いや、まぐれあたりってことがあります」

「失敬だ」

「ハッハハハハ」

「それじゃ二人で十本ずつときめて腕くらべをしよう」

と照彦様が発起する。正三君はもとより望むところだ。尋常の勝負となれば、お相手も張り合いがある。こうもちかけないと、拾いにばかりいかされて、楽なことができない。正三君だってあたりまえの子供だ、苦しいことが天性特別すきな筈もない。