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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

お父さんへ手紙を書いてあげるから、学習室でしばらく待っていなさい」

と安斉先生はお芝居がおじょうずだ。

「はあ」

と正三君もボンヤリしていられない。幸いありがたい涙が両眼にあふれている。悄然として立ちあがった。

「内藤君、待ってくれたまえ。先生、先生」

「なんでございますか?」

「僕が初め冗談半分にうそをついたのです。それで内藤君が本気になったんです」

と照彦様は正直なところをあらまし申したてた。

「それにしても、若様に組みつくという法がありますか?」

「僕が内藤正三位といって、ばかにしたんです」

「内藤君、なぜきみは早く若様におわびを申しあげない?」

と安斉先生が促した。

「若様、申しわけございません。僕は初めは冗談のつもりでした」

「僕がわるかったんだ」

「いや、僕こそご無礼申しあげました」

「いいんだよ、もう、きみ。帰らなくてもいいんだ。僕の部屋へきたまえ。先生、もう仲をよくします。失礼申しあげました」

と照彦様は正三君の手をとって学監室から出た。安斉先生はくずれかけた相好を正して、沈黙を守っていた。

正三君はゆきがかりもあったが、強薬の必要を感じていた。ごきげんばかりとってお相手をしていては若様の成績がおぼつかない。