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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

すると今学期中お目にかかれますまい。困りますな」

と照常様は指を折って日数を数えた。

「おなくなりになると、来学年もだめでしょう。ほんとうに困る」

と照彦様は時計を見上げた。

「大丈夫でございますよ」

と正三君がつい口を出した。

「どうしてわかる?」

と照正様はあまり感心しないようだった。

「僕、夕刻ちょっとお見まいにあがったんです」

「およろしいのか?」

「はあ。しかしまだお咳がとれませんから、ご遠慮申しあげて、もう一日お休みになるようでございます」

「あさってからおいでになるんだね?」

「はあ。しかしあさっては日曜です」

「うむ。そうそう。これはありがたい」

「ごむりをなさらない方がいいね」

と照常様がいった。

「早い。かぜの方で逃げる」

と照彦様が警句をはいたので、一同笑いだした。

まもなく照正様が、

「矢島先生、どうでしょうか? 今晩はこれぐらいのところにしておいては」

と時計を見上げた。

「もうソロソロ九時ですから、けっこうでございましょう。ナカナカご精が出ました」

と矢島先生はおじぎをして、英語の教科書をとじた。

「この時計は少し進んでいやしませんか?」

と数学の黒須先生が自分の腕時計と見くらべて首をかしげた。