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くしんのがくゆう
苦心の学友
佐々木 邦
「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页
と照常様は正三君を呼んで、しばらく耳打ちをした。正三君は続けざまにがてん首をした後、
「わかりました」とほほえんだ。
「始めます。さあ、内藤君、目をつぶっていたまえ。照彦」
「はあ」
「お前はなんでもいいから、指でさす。それを内藤君が後からあてるんだ」
「なにをさしましょう?」
「なるだけわからないものがいい」
「さあ」
「早くさせ」
「これ」
と照彦様は自分の鼻をさした。
「よし、インプインプ」
「…………」
「内藤君、インプインプといったらきみは目をさますんだよ」
「はあ」
と正三君は顔をおさえていた手をはずして目をあいた。
「インプというのは魔物のことだよ」
と照常様は説明して、
「さあ。インプインプ、照彦がなにをさした?」
ときいた。
「…………」
「このテーブルか?」
「違います」
「その電燈か?」
「違います」
「黒須先生のおめがねか?」
「違います」
「おひげか?」
「違います」
「照彦の鼻か?」
「そうです」
と正三君はあてた。
「もう一ぺん」
と照彦様は所望して、今度はストーヴをさした。
「インプインプ、照彦がなにをさした? そこにある石炭か?」
「違います」
「ストーヴか?」
「そうです」