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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

なんならちょっとお上がりくださいませんか?」

と老婦人がイソイソしていった。

「いや、照彦様が待っていらっしゃいますから、これで失礼いたします」

「お目にかかりたいと申しておりましたから、ちょっといかがでございますか?」

「いや、ご老体でございますから、どうぞお大切に」

「内藤君かい?」という声が奥からきこえた。

「はあ」

「お上がり」

「どうぞ」

とおくさんもすすめるので、正三君はもう仕方なかった。上がっていった。

「先生、いかがでございますか?」

と初めて直接にお見まいを申しあげた。

「この間から度々ありがとう。おかげさまでもうこのとおりよくなった」

「結構でございました。しかしご老体でいらっしゃいますから……」

「ばかをいっちゃいけない」

「はあ?」

「老体だから、命をおしまん。今晩から出仕いたしますぞ」

「…………」

「どんな具合だね? 学習室は」

「皆様ご勉強でございます」

「安心した。今朝も有本先生がおいでになって、ナカナカご精が出るようにおっしゃった」

「…………」

「学校の方はどんなお具合だね?」

「おかわりございません」

「そのなんとかいう悪い子とのお喧嘩はどうなりましたか?」