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くしんのがくゆう
苦心の学友
佐々木 邦
「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页
始終待っていてやらなければならない。正三君は学友として勤めはじめてからこの一月の中にいちじるしく力がついている。元来優秀なものが学校以外に老巧な家庭教師について予習と復習をうけるのだから、これは当然のことだった。
「僕はきみとは頭がちがうんだから、きみが進みたがると僕は困る」
と照彦様は苦しがる。
「きみは勉強して僕をいじめるつもりか?」
「僕に忠義をつくす気なら、もっとなまけろ」
なぞと無理なことばかりおっしゃる。
照彦様は他のことではなにをしても負けない気だが、学問となると最初からあきらめている。ちっとも本気にならない。学習室で一緒の机にすわって先生の講義をきいている時、正三君は地震が始まったのかと思うことが度々ある。しかしそれは照彦様のびんぼうゆすりだ。頭をかいてみたり足をつかんでみたり、しばらくもじっとしていない。まったく上の空だ。
「散乱心をいましめて」
と時おり学監の安斉先生が朗読口調でご注意申しあげる。すると照正様照常様までシャキッとする。安斉さんが一番こわい。
このお兄様がたにしても照彦様と大同小異だ。ご自分で勉強しようという気がない。正三君は一度、照常様が書生の杉山に数学の宿題をたのんでいるところへゆきあたった。