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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

と冗談ながらおっしゃる。正三君はむろん家へ帰りたい。しかし同時に強い子だと思ってもらいたい。そこで、

「僕、まだいいです」

とその都度がまんした。なお照彦様がはなさない。土曜日は予習復習の責任がないから、二人で思い存分遊びたいのである。正三君においてもこれはけっして辛いお相手でない。秋晴れの土曜日曜の早くたってしまうこと!

正三君は家へ帰らないかわりに毎週おこたらず手紙を書いた。殿様や奥様のご親切なことや照彦様と仲のいいことを報告した。家からはお父さんが二、三度お役所の帰りによって様子を見ていった。しかし男親に男の子だ。

「どうだね? なれたかね?」

「なれました」

「どうだね? 勤まるかね」

「勤まります」

とどっちも強がっていてあまり口をきかない。そこへ家令の富田さんが、

「もうすっかりおなじみになりましたから、すこしもご心配ありません。ちょうどいいお相手です」

と保証してくれるから、正三君もよんどころない。のっぴきならず強くなるような傾向があった。

試験のことで双方おかんむりをまげた日の夕刻、二人はもうすっかりごきげんが直って洋館の食堂へはいった。その卓上、奥様をお相手に話していられたお殿様が、