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おちばいき

落ち梅記

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1949(昭和24)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,748 字 · 61 页

青空文庫

金之助は部屋へ戻り、手文庫の中から出した物を加えて、包み直すと、それを友の前へ押しやってから、顔には穏やかな色を湛えたまま、少しばかり屹とした口ぶりでこう云った。

「これまではなにも云わなかったが、今日はひと言だけ云わせて貰う、――もうそろそろ止めてもいいじぶんじゃないか、これ以上こんなことを続けているとぬけられなくなる。ここに十枚はいっているからこれで片をつけて、さっぱりと手を洗って呉れないか」

「――うん、わかっているんだ」

半三郎は紙包を取り、だるそうな動作でふところへ入れたが、しまりのない唇を歪め自分を嘲るように冷笑した。

「――自分でもこんどこそ立直ろうと思っているんだよ、なんなら誓ってもいいが」

いやそんな必要はないと云って金之助はじっと友の顔を見た。半三郎はなにかを証明するとでもいうふうにそれを見返したが、ちからのない濁った眼はすぐに脇へそれ、もういちど、唇を歪めた。

「誓うなどというおおげさなことじゃあない、もっとあっさり止める気持なんだ、もともと遊びなんだから、なにもそんなに重大問題じゃないだろう」

「――そのとおりなんだ」

「云っておくほうがいいと思うが、御両親がなにか聞かれたようだ、ほんの風聞くらいのものらしいが、このうえ御心配をかけるようでは悪い、頼むよ公郷」