轻松读懂日语经典作品
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おちばいき
落ち梅記
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1949(昭和24)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,748 字 · 61 页
半三郎は脇へ向きながら頷いた。そして精のぬけたような動作で座を立ったが、よろめいて障子にぶっつかった。酔っているのではなく神経が耗弱しているのである、玄関を出てゆく後ろ姿にも、肩から背へかけて躯の衰えがあからさまにみえた。――そんなにも踏み込んでしまったのか、金之助は心の昏くなるような気持でそう思った。
客の帰ったことを告げて部屋へ戻ると、間もなく由利江が来た。大柄なゆったりとした躯つきで、ぜんたいが柔らかくまるい線に包まれている、いつも笑っているような表情と、おちついたやさしいもの云いが幼い頃からの特徴で、知るほどの者に「由利江さんは幸福を持って来る」と云われたものである。慥かに、由利江のいるところには必ず温かい楽しい雰囲気がついてまわった。悲しいとき、愁いのあるとき、苦しいとき、そして絶望しているようなときでさえも、由利江と話していると慰められて気が晴れてくる。これという理由はないのだが、なんとなく世の中が明るく、生きることが楽しいような気持になってくるのであった。――由利江の家はこの沢渡家とおなじ家老格で、食禄は八千七百石、父の佐竹千五郎は筆頭年寄役である、由利江のほかに千之丞という異母弟がいるが、その千之丞も母親よりは彼女のほうに深くなついて、家にさえいれば姉のそばから離れないというふうだった