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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
のであった。薬用石鹸は面皰に対しては、ただ徒に刺戟するだけで、なんの効能もなかったようである。私は女中部屋で、私の子守であったしづやが母に叱られているのを見たことを覚えている。なんで叱られていたのかは知らないが、しづやは不満そうに押し黙っていた。しづやがなかなかあやまらないので、母の小言がいつまでも続いているようであった。母はしづやのことを、よく「さわると脹れるゴム風船」と云った。つまり、叱るとすぐにふくれるという意味であった。私には母のその言葉が大変気がきいたものに思えた。母自身が、それをいかにも気がきいた表現のように、はたに云って聞かせたのである。しづやが暇を取ってからは、えつや、まきや、花や、それに婆やが二人来た。みんな一年かそこらで交替した。私はいちど子供らしい好奇心から、女中部屋の戸棚を覗いて見たことがある。誰のときだったかは記憶にないが、隅の方にその頃発行されていた面白倶楽部という雑誌があって、それが目に入ったのを覚えている。
女中部屋は障子を隔てて、茶の間と隣り合っていた。茶の間には、その障子に近く長火鉢が置いてあった。長火鉢の引出には小銭が入っていることがあった。