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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
あるとき、私が誰もいない隙にこっそり引出をあけて、中の金を盗もうとしていると、不意に背ろの障子があいて、そこに母が立っていた。母は障子のかげで様子を窺っていたらしかった。私は勿論母から厳しく折檻された。茶の間には、柱時計の掛けてある下に、菓子を入れてある戸棚があった。私はよくその戸棚に首を突っ込んで、菓子を漁った。最中や銅鑼焼のような類のものが多かった。家内の者はここで御飯を食べた。祖父だけは躯を悪くしてからは隣りの八畳間に常住床を敷いて伏すようになり、御飯もひとりそこで食べた。ときどき兄がその相伴をしていた。兄は祖父さん祖母さん子で、また、母の心は私にあった。あるとき、祖父が兄をひどく叱ったことがあった。私はそばにいたが、「ごめんなさい。」と云った。すると祖父は兄に向って、「みろ、清がお前に代ってあやまっているぞ。」と云った。祖父は腹の中では、私の賢しらをさげすんでいたに違いなかった。兄は私以上にききわけがなくて我儘なところもあったが、大根は素直な性質であった。この座敷の違棚には木彫の鬼の念仏が飾ってあった。私が寝ている枕もとに、兄がこの像を置いて、目をさました私が怯えて泣き出したこともあった。